追いかける。2

周りを見渡し、開いている席を探す。
幾つか開いてる席があったので、その一つに座った。
ここもブースみたいに区切られていた。個々に世界観があるようにブースにはそれぞれ座った人の雰囲気が感じられる。
イライラして怒りながらマウスに文句を言っている人。
とりあえず探してる風の人。
必死にパズルのピースを探すような姿勢の人。
みな後ろ姿しか見えないが雰囲気はすごく出ていた。

そんな空気の中、自分も戦闘態勢に入ろうと、足元に荷物を置いてマウスをクリックしていった。
求人票は多数あるが条件が厳しい。というか25歳以下の新卒でないとウチは採らないよと言わんばかりの条件だ。
でも、ここにいる人は多分、25歳以上がほとんどだ。30代後半以降の人だけと言っても過言ではない。
それでもみんな検索に勤しんでいる。その検索が仕事のように見えてしまう。検索のプロかもしれない。
自分も負けてられないので検索を続けた。金銭面は前職より上げる事は考えていないので特に問題無いのだが経験した業務などでダメになる。

自分の前職はシステム運用だった。開発されたシステムを維持管理していくオペレーター業務がメインだった。
開発はかなり昔にちょっとだけやった。だから、開発系の求人は大抵アウトだった。
運用系はやはり少ない。というかない。それは当然と言えば当然かもしれない。
運用系の仕事はその現場のみに通用するやり方で行われている為、他では通用しない。
使用しているサーバやOSが一緒でもシステムが違うと新人さんと一緒の扱いになる。
必然的に運用経験者より新人さんの方が単価が安いので、じゃ新人さんでとなる。
リストラされた会社もそうだった。運用系の仕事がなくなって開発系出来る?と言われて退職となった。
会社の言うとおりに運用系の仕事をやってきたのにリストラされた。かなり怒りとショックがあった。
怒りは会社に、ショックは自分だった。結局、自分は何をしてきたのだろう?と思ってしまった。
何も考えずに会社の言うとおりに動いた自分がいけないと言われればそれまでだ。
だから会社を退職した。自分の力の無さを痛感しながら。

そうだ求人検索しなくちゃ。ちょっと泣きそうになりながらもマウスをクリックしていく。
カチカチ。この音がこんなに悲しく聞こえるのはなぜなんだろう?とても悲しい。無駄に時間がカチカチと過ぎていく。
とりあえずダメ元の求人票を5、6枚選んで、プリントアウトした。